Japan Society for Madagascar Studies / Fikambanana Japoney ho an'ny Fikarohana momba an'i Madagasikara
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「虫の目からみたマダガスカルの人と自然」

養老孟司氏(解剖学者)、今森光彦氏(写真家)
司会=山岸哲(山階鳥類研究所所長)

山岸:ただいまご紹介いただきました山岸と申します。今日ご紹介と司会をさせていただきます。お二人とも非常にご高名な先生方で今更ご紹介の必要もなかろうかと思うのですが、一応しきたりに沿いましてご紹介からさせていただきます。

皆様から向かって右側、養老孟司先生です。昭和12年のお生まれと申されますから私より二つお兄さんのわけですが、東大のあと母校へ戻られまして、解剖学教室で仕事をされました。脳の大家だそうです。僕は一度、あの方の脳の中を見たいと思っているんですが、養老先生と私は、「バカの壁」が2003年でしたか馬鹿売れする前年に、そんな馬鹿売れするとは知らないで私の研究所へ来ていただいて対談をしたことがございます。その時に「里山お手入れ論」なんていうのを伺いまして、「非常に面白い先生だなあ」と思っておりました。

片や今森さんも里山に非常に興味があるので、マダガスカルを離れてそういう話が聞けるかもしれません。今森さんのほうは、大学卒業後独力で写真の道を極められたプロのカメラマンでございます。お生まれは昭和29年、ちょっとお若いのですが、滋賀県にお生まれになっています。

言い落としましたが、養老先生のほうは鎌倉市にお生まれになっています。お二人とも文化の中心地からちょっと離れた所にお生まれになっているというのが特徴です。今森さんは京都からちょっと離れた所、養老さんは東京からちょっと離れた自然に非常に恵まれた所にお生まれになっています。

今森さんは、そのあとプロのカメラマンとして昆虫を主に、スカラベの写真を最初撮られまして、それから滋賀の琵琶湖の周りの自然に興味を持たれて、先程ご紹介したような里山の問題なんかに取り組まれています。今はビデオなどもやって、NHKなどでも作品をご覧になった方が多いんじゃないかと思います。

お二人に共通するのは「虫が好きだ」という点でして、養老先生は脳の研究のほかに、どちらが本職か分からないぐらいゾウムシという虫のご造詣が深い。今森さんのほうはもちろん昆虫写真家でございますので、そこが共通点です。

もう一つの共通点は、お二人ともマダガスカルのご経験があるという点で、今日のマダガスカル研究懇談会でお話をいただくことになったわけです。今森さんは、今から10年ぐらい前でしたか、初めてマダガスカルへ行く時に私の研究室を訪ねられまして、「マダガスカル行くんだけど、どんな所へ行ったらいいか」というようなご相談をしたのがきっかけで、知り合いになることができました。

そういう共通点をお持ちのお二人ですが、今日これから1時間半ぐらい、今森さんのきれいな写真を見ながらお二人で対談をしていただくことになっています。対談に司会なんて必要ないので、私は話が始まりましたら、最後に「もう時間ですよ。やめてください」ということを言うだけで済ませたいと思っています。

お話が終わったあと、30分ぐらい会場を交えてご質問なりお話し合いができる時間を取ってあるそうですので、どうぞお楽しみにそれをお待ちください。では、よろしくお願い致します。

今森:今森です。お願いします。今、山岸さんがマダガスカルくんだりとか仰られましたが、そこでどうしたか、思い出しましたよ、10年前を(笑)。今日見ていただく写真は、実は古いのです。1990年ごろに行った写真を見ていただきたいと思います。2度にわたって行っていまして、1回目は8 月ごろに1カ月ぐらい行って、あとは1990年の秋に4カ月、91年の冬にちょっとまたがっていたと思うのですけど、そのころに行って、その時、訪れたのを思い出しました(笑)。その写真を見ていただきたいと思います。

養老さんも、どうぞよろしくお願いします。久々で。養老さんはいつごろあれですか。

養老:いや、私はそんなに古くはないです。

今森:何年ぐらい前ですか。

養老:10年はたってないです。正確な年数は、今覚えていないんですけど。

今森:ちょうど私が15年ぐらい前に行かせていただいた時はバブルのころで、割と世の中が景気が良くて、経済的にすごく社会が潤っていた時期で、博物学というかそういうものがけっこうもてはやされた時期でしたね、マスコミの中で。

その時に、毎日放送が「ビーグル号航海記」というイベントというか割と大きな枠の放送なんですけど、全部で6回に分かれていて、6週にわたって連続で放送がありました。それのロケの一つがマダガスカルだったんですね。ですからすごく景気が良くて、マダガスカルのあちこちを飛行機で飛び回ったのを覚えています。もうそういう時代は二度と来ないだろうなと思うんですけど(笑)。ちょっと何か悲しい話ばかりですみません。養老さんのころはどうですか。

養老:僕が行ったのは、「世界遺産」と言うテレビの番組です。アフリカを回ったんですけど、その間に、2週間ぐらいマダガスカルを挟んで。一番印象的だったのは、ケニアから渡ったんですけど、飛行場へ行って、ケニアのナイロビの空港午後5時発のマダガスカル航空で、国際便の常識で3時に行ったんです、2時間前に。そしたらカウンターにだれもいないんですよね。いつ出るか分かんないんでしょうがない、待っていたら(笑)、4時ごろになったらちょろちょろ女の子が出てきたんで「マダガスカル行きなんだけど」って言ったら、「まだ飛行機向こう出たかどうか分かんない」って言うんですよね(笑)。

それで、飛行機が出るはずの5 時になったらやっとカウンターが開いて荷物を預かりだした。それで、荷物を預けて中に入ったのです。いつ出るのかよく分からないけど、ともかく出ることは間違いなさそうなので。空港の中に入っちゃったら出られないので、しょうがないから暇だから座って待っていたら、6時になったら男の人がカウンターに出てきて、中の搭乗口の所で紙を配っているからもらいに行ったのです。そしたらジュースの券で、要するに「それ飲んで待ってろ」っていうことなんですよね(笑)。それで何を言ったかといったら、「9時になったら晩飯の券配る」って言ったんですよ(笑)。

それから3時間待って、本当に9時に行ったら晩飯の券をくれたから、そのままトランジットの食堂へ行って1時間飯食った。10時になって戻ったら搭乗口が別な所に変更になっていて、そこへ行ったら今度はちゃんと出る時間が出た。何て出たかっていうと、カチャカチャって動くのがあるじゃないですか。あれに「12時01分」って出ているんだよね(笑)。だから、5 時発の飛行機が12時1分になっていたんだよ。

「何で1が付いてんのか」ってあとでいろいろ考えたんだけど、結局あれ、ちゃーって動くじゃないですか。動かしたら、1個多分行き過ぎちゃったんじゃないかと(笑)。それで、直すのが面倒臭いから01のままにして(笑)、2時間1分遅れで出ました。

今森:その時にマダガスカルの洗礼を受けられたわけですね。私は空港に着いた時にその洗礼を受けましたよ。荷物が出てこなかったのです。あの時は一緒に行ったスタッフの三脚が、けっこう三脚ってこんな大きい、割と長いでしょう。あれが出てこなかった。それでもう、やたら捜しまくって。そうしたら、飛行機、ちょうど荷物下ろしているところだったんだけど、すごくのんびりした感じがして、国際線なんですけどローカル線のような感じがして。マダガスカルっていうのは、そういう最初から何かほのぼのとしたというか馬鹿げているというか、そういうところってありますよね(笑)。

養老:結局、着いたのが確か午前4時ぐらいだったですね。

今森:私も夜中でしたね、確か。私のやつは台湾から、モーリシャス経由で、レユニオン島で1泊して、その夜中にまたマダガスカルに行くという便だったのを覚えていますね。「レユニオン島で1日観光しろ」という指令が出まして1日観光していたんですけど(笑)、何かすごい時間かかったと思いますね。今でも地球上で一番遠い所じゃないですかね。ほかにもありますかね。

養老:そうですね、いろいろ・・・。遠いっていうか、遠いか近いかよく分からない所ですよね(笑)。

今森:でも、これだけ乗り継ぎが必要な場所って、ちょっとないんじゃないかと思いますよね。

養老:いい薬になると思いますよ、行くと。

今森:いい薬っていうのは?

養老:つまり、僕もこの間行って帰っただけだけど、鎌倉駅でコーヒー飲む所があるんですよ。大抵電車が来るのを待っててそこへ行くんですけどね。おばさんがいて、たまたまお客がいなくなっちゃって二人きりになったら、おばさんが「近ごろお客さんが機嫌悪いんですよね」って言うから、「ああ、それは電車が時間通り来るからだよ」って僕言ったんですけどね(笑)。どうも意味が分かんなかったみたいです(笑)。

今森:そうかもしれませんね。

養老:でも、コーヒー飲んで待って、全然電車来なくて帰っちゃって、「今日は来なかった」とか言ってるほうがね。

今森:そうですね。まさにそういう精神でないとやっていけないですね。その洗礼を受けてから1回目の旅が1カ月ぐらいだったんですけど、やっぱり内陸部に入ると人々がまさにそういう空気で、昼寝をしていたり実にのんびりしていて、何となくアフリカのあんな所に来ているにもかかわらずアジアの香りがして、なかなかいいですよね。

養老:それはそうですね。

今森:田んぼもありますしね。でも田んぼをやっているけれども、耕している人はちょっと色が黒かったりして、すごくエキゾチックっていう感じがしますけどね。今でも「一番もう一度行きたい所はどこか」って聞かれると「マダガスカル」って僕よく答えるんですけど、まだまだ行き足りないと思いますね。

養老:ちょっと行って済む所じゃないですね(笑)。

今森:本当にそうですね。あの大きさと、それから多様性というか、熱帯だか砂漠だかよく分からないというところとか、本当にちょっと行って済むもんじゃないと思うんですけど。こうやってしゃべっていると映像を見ないで終わりそうなんで・・・。

養老:ちょっと見せて・・・。

今森:映像をちょっと見ながらいきましょうか。間違っていたら言ってくださいね、だれかご専門の方(笑)。というのは、何せ10年前の、大体覚えてはいるんですけども、昨日慌てて私、自分のノートをちょっと紐解いて一通り見たっていうだけなんで。ノートにはけっこう克明に書いてあるんですけど、忘れていたり勘違いがけっこうあると思いますので、間違っていたら言ってください(笑)。

これは東海岸の上空を飛んでいるところですけれども、真っすぐな海岸がずっと続いていて、こういう海岸ってすごく珍しいですよね。あんまり島ではないんじゃないですかね。(写真1裏表紙上段)

養老:そうですね。

今森:普通入り組むんですけども。

養老:ちょっとこれ、距離感がつかめないのです。

今森:そうなんですよね。これ、飛行機が1機ぐらい飛んでいるとよく分かるんですけど飛んでなくて。でもこれ、相当広い範囲だと思います。今見えている所、森ですね。緑の所。これはジャングルというよりも、森ではなくて全部二次林でした。一度伐採されたあとが焼き畑になっていたり、それからあと畑になっていたりするんですけど、ずっとそういう景観なんですね。私が指さしている所の真ん中、森の中、緑の所なんです。先に見えているんですけど、薄く上がっているの、これは煙ですね。全部人がそこに生活している所。今見えている所は多分多かれ少なかれ人が住んでいて、かなり向こうの山の中腹の手前ぐらいにいわゆる森みたいなものがあります。

僕が驚いたのはすごく耕作地が多くて、やっぱり「マダガスカル」っていうとすごく「未開な地域」というイメージがあったんですけど、行ったら全然そうではなくて、ほとんどが開墾地だったというのが印象ですね。聞くところによると、原生の森は本当にもう数パーセントとかでしょう?

養老:でしょうね。よく焼きますよね。

今森:焼きますよね。焼き畑ですかね、あれは。

養老:いや、僕はそれが非常に不思議で、専門家がおられたら伺いたいんだけど。車で走っても、ものすごく広い所を焼いているんですよね。別に人がいるわけじゃなくて火が勝手に燃えているという感じなんですけど、おおげさに言うと関東平野ぐらいの所、燃やしているんじゃないかと思うんですけど。

あんなに燃やして、僕は昔どっかで読んだ覚えがあるんですけど、要するに牧草を生やすのに、焼き畑じゃなくて畑にする代わりに牧草を生やすので、そのために焼くんだってどこかで読んだような気がするんだけど。でもそんなに牛もいないんですよね。あれは、焼いているのは多分レクリエーションで、京都の大文字焼きみたいなもんじゃないかって気がしたんだよね(笑)。

今森:大文字焼きのあれでしますかね。でも、まあ意味がないということで、意味なくやって・・・。

養老:というか、もっとさかのぼって人間が初めてマダガスカルに行ったのは比較的新しいですよね。その時に、非常に入りにくい所だったんじゃないかって気がするんですね。というのは、とげだらけでしょう。乾燥した地域にはとげのある植物が多くて、しかもいるものっていうと奇妙な生き物でしょう。ホエザルみたいに大きな声で鳴く原猿がいるけど気持ち悪いじゃないですか。恐らく人間が最初に行ったころはあれのものすごく大きいやつがいたわけですよね。そうすると不気味だから、行った人がそこに住み着こうとしたら、焼いちゃうのが一番早かったんじゃないかって気がする。それで「焼く」という習慣が残ったのかしらとか勝手に想像していたんですけどね。

今森:何か腰が落ち着かない雰囲気はありますよね、マダガスカルの人たち。よくアマゾンとか東南アジアでもそうですけど、ああいう所へ行くと本当に原住民の方がいて、長い歴史の中で土地の中で育った文化をちゃんと持っていてそれをこなしているという心地良さもあるんですけど、マダガスカルの場合は確かにちょっと違いますね。まだ本当に年代が浅くてまるで未経験のところがあって、人々の中に手探りをしているっていうようなところはありますね。

養老:牛もコブウシでしょう。

今森:コブウシです。

養老:あれは、起源は恐らくアフリカですよね。ですからアフリカに習慣があったんだと思うんですね。だってあんなもの、焼き畑じゃないんだけど焼いて飼うほどいないでしょう(笑)。

今森:アフリカとか熱帯のああいう所って、みんな本当に焼き畑が好きですよね。そういう恐怖感から来るのかな。

養老:恐怖感っていうか、その土地を利用するためにね。要するに、もともとの環境の原生の植物は使えない。それで今おっしゃったように、原生林が減ったっていうのも、むしろ積極的に減らしたのかな、という気がちょっとしたんですけど。

今森:なるほどね。しかし、今こういう角度でマダガスカルを見てみると本当に森が少ないんで、ちょっと危機感はありますよね。ですから、9割以上ですか、こういう牛がいる所なのに森がなくなっていく。大変惜しいような気がしますけどね。人との戦いっていうことなのかな。

次、お願いします。

これは、今の上から見ていた海の沖合いで撮影したんですけど、今でもこれやっているんですかね、こんなの(笑)。ちょっと分からないですけど。当時としては割とよく見たんですね。帆船ですよね、アウトリガーの。それこそマダガスカルに人が渡ってきた時代を彷彿させるようなスタイルが、昔から全然変わってない帆船なんですよね。これは感動しましたね。これは、僕がここで海岸部を撮影していた時にけっこう数見たのです。「すごいなあ」と思いましたね。大きさといい、「これで大洋を渡ってきたんだろうな」という感じがするんですけどね。

養老:あの時はそばに行って見ましたよ、これ。走ってくれましたけどね。

今森:多分汚れてなっているんでしょうけど、帆の布が世界地図みたいに見えるのがおかしいですよね。(写真2裏表紙中段)

養老:この中に南米が見えるんですよ(笑)。

今森:そう、南米が見えますよね(笑)。そうなんですよ。何か世界地図のように見えて。それと、いびつなのが面白いですよね。正方形にちゃんと切ってないというのがこれまた面白くて。これはどうも少年が木を運んでいるようでしたね。こうやって大海に出てまきを運ぶんですね。

僕はそんなあちこち行くわけじゃないんですけど、こういう海を渡る人って意外に見ないですよね。川を渡っている人はよく見るんですけど、生活の中でこうやって平気で海に出ていってまた戻るというか、これも外からやってきた人の独特のあれかなという感じはしますけどね。これは今でも見られるんでしょうかね。もう15年たった今でもこういうのが残っているといいんですけど。また行ってみたいと思うんですけど。

次をお願いします。

これは養老さん、行きましたか、アンタナナリヴ。

養老:ああ、何となく行きましたけど。ここは・・・、いや、見ていませんね。市場ですか。

今森:市場ですね。ズマー(zoma)って言われているやつです。雨も降ってないのに傘差して、これ全部、傘1個に一つの屋台があるんですね。これ、けっこう楽しかったですけどね。私、ここは1週間ぐらいこってりと見て回ったのを覚えています。これも今でもこんな感じなんでしょうか(笑)。多分そうなんでしょうね。この市場があって、それを囲むようにずっと居住区がありますね。

養老:ありますね。

今森:そういう状態ですね。みんなこれも生活品を売っています。鶏を売っていたり、ガチョウを売っていたり、トマトとかキャベツとか、そういう野菜を売っていたりするんですけど、けっこう楽しいですね。何かフンボールみたいなやつを見つけて行ったら、炭の玉らしいですね、固形燃料っていうか。そんなものもいっぱいあってけっこう面白かったですね。次、行きます。

[編集部註:これは炭団のような固形燃料ではなく、木灰を固めたマダガスカル自家製の石鹸 savony gasyを指しているものと考えられます]

これがそうですね。今、向こうにパラソルが畳まれていますけれども、トマトを売っている人ですね。自分の畑で採れたものをみんなこうやって売るんですね。前にグラムを量るあれがあって、そこで量ってもらうわけです。新鮮なものが手に入るわけですね(写真3裏表紙下段)。

次、お願いします。

これは比較的アンタナナリヴから近い所の畑です。こんな感じで、至る所畑になっています。森はほとんど残ってなくて、ちょっと荒涼とした感じもするんですけど、今子供たちが立っている所も豆か何か植える畑なんですね。今ちょうど植えたばかりのところで、これから大きくなるんです。こうやって生活して、向こうのほうにちょっとれんが造りの家が見えていますけど、そこで暮らしているわけですね。僕はマダガスカルへ行って何が印象的だったかというと、この子供たちの笑顔がすごかったです。

養老:ああ、そうですね。

今森:今の日本の子供は、こんなふうに撮ってこんな笑顔しないだろうなというのがありますね。すごく生き生きしています。

養老:それは日本が変なんですよ、世界の基準から言うとね(笑)。

今森:そうなんですね(笑)。

次、お願いします。

これもアンタナナリヴに比較的近い所ですね。これは有名なファマディハナ(famadihana)って言うお祭りですね。5年に1度死者をよみがえらせるというか、ミイラを取り出して包帯を巻き換える儀式ですね(笑)。これも幸運に出遭うことができまして。これは1回目の1カ月ぐらいの旅の真っただ中に幸運にも遭ったんですけど、あんまり悲しさはなくて、パレードになっていて、ラッパを吹いている人とかいっぱいいるんですけどね。踊っている人もいますね。今、画面の左の上のほうは人が踊っていますよね。これはけっこう楽しかったですね。

[編集部註:ファマディハナにおいて布の巻き替えの対象となるのは、仮埋葬の後に掘り起こした骨であり、その際肉体が腐らずにミイラ状に残っていることはたいへんに忌避される事柄となります]

次、お願いします。

これがそうなんですよ。手前にいる人が棒を持っていますね。これで墓をこじ開けて、今お墓から包帯ぐるぐるの死者が出てきて、かつぎ上げて、ちょっと別の所に安置して、包帯巻き換えてまた入れる。こういう風習というのはどこから来ているんでしょうね(笑)。

養老:いや、全然知らない(笑)。

今森:これ、実に不思議ですけど。もちろん何年も前に死んでいる人なんで、人々の顔にはもう険しい顔はなくて、ただただ掘るのがしんどいだけなんですけど、そういう面白い儀式ですね。これも標高が高いです。これは千メートル前後ぐらいの高原ですよね。そういう場所で行われています。

次、お願いします。

これは場所はどこだったか。多分これもマダガスカルに行かれている方はご存じの方いらっしゃると思うんですけど、こういう種族の人がやたらこういう絵を描いて、相撲をとっている絵とか、いろいろやるんですね。こういう面白いお墓がいっぱい建っていて、これも取材したのを覚えていますね。

[編集部註:マダガスカル南部のアンタンドゥルイ族(Antandroy)の墓]

次、お願いします。

これもそうですね。これは聞くところによると、ここのご先祖さんが兵士だったそうで、その兵士をかたどった木掘りを上に置いて掲げたところです。こんなトーテムポールを作って、そこが四角に囲ってあって、それが墓地なんですね。そういう状況ですね。必ずこういう彫り物をしてあるんですね。

次、お願いします。

これが郊外で割とよく見る風景なんですけどね、牛がいて。これがさっき養老さんがおっしゃったコブウシですね。

養老:はい。使っていますね、ちゃんと。

今森:そうですね。これはすごくアフリカ的ですよね。牛の顔も何となくアフリカ的だなという感じがしますね。

養老:だいぶサイズが違うように見えるんですけど。

今森:何がですか。

養老:牛。

今森:牛。そうですね。ちょっと何か・・・。

養老:一応二頭立てなんでしょ、これ(笑)。

今森:これ、一応二頭立てなんですよ。

養老:1.5頭ぐらいに見えるんですけど(笑)。

今森:そうですね。ちょっと小さいですね。このおじさんが大きいということはないと思いますね(笑)。多分小さいんですね(笑)。こうやって家畜の犬も一緒に歩いていたりする光景をよく見ますね。独特の風景ですよね。これを見ていると本当にアフリカの感じがしますね。バックに見えているあれは、アカシアだと思います。黄色い花が咲いている。これはまだ春が来ていない状態なので、早春の感じですね。おじさんが襟巻きしていますけどけっこう寒くて、でも気持ちがいい季節なんですね。がらがらがらがらと、こうやって荷物を運んでいるわけです。

次、お願いします。

これは熱帯雨林と言っていいのか森と言っていいのか分からないんですけど、私が見た比較的規模の大きな森の上空です。保護区になっていると思います。ナショナルパークになっていると思うんですけど、その真上です。これ、すごく広く見えていますけど、狭いです。マダガスカルの規模から言うと、すごく小さいんですね。養老さんは森の中は行かれましたか。

養老:はい、ちょっと歩きました。

今森:行かれましたか。どの辺りですか、行かれたのは。

養老:いや、はっきり覚えてないんだけど、やっぱりアンタナナリヴの一番近くに入りましたね。

今森:中も行かれたんですか。

養老:はい。

今森:けっこう中が湿潤というか・・・。

養老:そうです。しっけていました。

今森:そうですよね。その時、野生動物って見られましたか。

養老:大体、野生動物をカメラで撮りに行ったんでね。ホエザルとかああいうのが中心でしたけど、あとは鳥ですね。

[編集部註:養老さんは、大声で吠える原猿を「ホエザル」と表現されています]

今森:なるほど。

養老:僕が一番驚いたのはタマヤスデね。タマヤスデがここのは緑色なのです。しかも親になってないと思うんですけど、ちょっと小さめで僕の親指ぐらいのやつが何と林の中に数百頭固まっているのです、なぜか。ヤスデって固まるでしょう。

今森:え?そんな固まりますかね。

養老:はい。びっくりしましたね。大きいでしょう。大体このくらいありますかね、玉になってね(と指で10円玉位の輪をつくる)。それが何百って群れているんですよ、1カ所に。

今森:ちょっと気持ち悪いですね。

養老:あんまり気持ち悪くなかったですね(笑)。

今森:ああ、そうそう。気持ち悪いって人によって違いますね。

養老:そうです(笑)。

今森:私も口先で言っているだけで、本当は気持ち悪くないんですけど。

養老:あれ、時々お土産に持って帰ってこようかと思うんだけど、ころっと丸まって別に何も害はないでしょう。においもしないし。

今森:そうですよね。あんなでかいやつっていないですね。

養老:そうなんですよ。熱帯に行くといるんですよ。ベトナムなんかだと紫色のやつがいますけどね。こんなのいますよね(と指でゴルフボール大を示す)。

今森:ええ、見たことあります。

養老:硬いんですよね。

今森:つるっつるでね。で、持って帰ってこられたんですか。

養老:いや、持ってこなかった(笑)。飛行機の中で動き出したりすると困るなあって(笑)。丸まっててくれればいいけど(笑)。

今森:でも、丸まるときはあれ、ほんとにぴっかぴかで真ん丸になりますよね。あれがもし日本にいたら、ダンゴムシも顔負けですね。

養老:ペットにいいんじゃないかなと思ったんですけどね。

今森:マダガスカルにもたくさんいるんですか。

養老:いました。

今森:いました?それはでも、あれですね。こういう規模の森しか残ってないんですけど、いましたか・・・。

養老:(スクリーンに目を移し)これ、色が違うのは影になっているの?雲ですね。

今森:黒くなっているのは雲の影ですね。そういえば点々とあって、この日は晴れているんで、ちぎれ雲がずっと点々と広がっているんですね。

養老:日本だと黒い所は杉林なんですけどね(笑)。

今森:そうですよね。そんな感じです。日本の雑木林も上空から見るとこんなふうに見えるんですよね。熱帯雨林と区別がつかないのです。それがすごく面白いですね。よく雑木林の写真を見せると「これ、どこの熱帯雨林だ」と言われるんですけど、ただの雑木林なんです。よく似ていますよね。コンスタントに同じ種類というか傾向の森がびっちりとあって。

次、お願いします。

これは中ですね。この時は湿度がかなり高いですね。

養老:ここはかなり高そうですね。渓谷みたいになっているんですね。

今森:そうですね。左から右に川が流れているんですけど、水が白く乳白に見えてるのはスローシャッターのせいで、勢いよく流れているんですね。湿潤な森でね。私、先日屋久島に行っていたのですが、まさにこんな感じですね。

養老:そうですね。似ていますね。

今森:屋久島に「もののけ姫の森」っていうのがあるんですけど、そこと寸分変わらない風景ですね。ここもけっこう標高が高かったです。僕がここで撮影した当時、現地の人に聞いたら確か600メートルか700メートルぐらいの標高だったと思います。この沢は上っていったので、あとでここで見た生き物とかもいくつか出てくるんですけど。ここは恐らくマダガスカルの中では一番湿潤な場所なんでしょうね。これ以上の場所はないと思います。

次、お願いします。養老さん、これは遭われました?

養老:これ、何でしょうね。

今森:これ、インドリですよね。

養老:残念でした。これは見てないです。

今森:そうですか。これもさっきの森の中の近くで見たんですけど、すごい声をするんですね。「キャー」とかいう声でして、それを追い掛けていくといて、人を警戒はするんですけどけっこう近くまで寄れたのを覚えています。これは大きさはどのぐらいだったかな。小学校の5 、6年生の子供の体ぐらいだったですね。

今森:養老さん、何か原猿は見られました?

養老:いろいろ見ましたよ。

今森:見られていますか。

養老:夜も歩きましたから。

今森:じゃ、何とかキツネザルとか、いろんな種類がいますよね。

養老:ネズミキツネザルとか、ネズミなのかキツネなのか猿なのかはっきりしないやつです(笑)。

今森:原猿探しは面白いですよね。

養老:そうですね。

今森:アイアイは見られましたか。

養老:いや、アイアイは見ていません。

今森:そうですか。私もあれ、見られなかったんですよ。結局飼われているアイアイを見せてもらいまして、写真は撮らなかったですね。あの指はすごいですよね。5本の指の真ん中だけが爪楊枝になっているんですよね(笑)。それで穴に手を入れて、カミキリムシの幼虫とか捕って食べるんでしょう、あれ。すごいですよね。

養老:本当は僕は食虫類を調べてたんで、猿よりもそっちが見たかったんですけど、あれは難しいですね、やっぱり。

今森:そうですか。一緒には見れない。

養老:夜行性でね。夜、猿のほうにどうしても目が行っちゃうんでね。

今森:そうですね。

養老:あと、カエルとカメレオンが・・・。

今森:そうそう。カエルとカメレオン。

次、お願いします。

これはアングレカムです。これは真上に咲いているやつをこんなふうに仰ぐように撮っているんです。これは、さっき見ていただいた熱帯雨林の所と東海岸沿いのあちこちでけっこう広く見ました。ランを専門に研究している人がいて、その人も一緒に同行してもらってずっと探し歩いて。ただ、これはマニアに乱獲されるのです。それで激減していると聞きましたね。下の所に根っこがあるんですけど、根っこをわしづかみにしたらぽこっと取れるんですよね。

養老:取れる、取れる。

今森:取れますよね。簡単に取れちゃうんで、取られるって言っていましたね。あとはこのランが低地性で、あんまり高山になくて、開発されやすい標高の低い所の熱帯にあるんで、その二つで激減しているっていうような話ですね。

ここのこれが距ですね。ここからこう伸びていて、ここが最後です。この先端の1センチ強の所に蜜がたまっているんですね。中は空洞です。有名な口の長い蛾がいますよね。それが、ここまで口吻を伸ばして蜜を吸ってるということなんです。

養老:ダーウィンが予測したって有名なやつ・・・。

[編集部註:ダーウィンは、アングレカムという蘭の花弁の後ろから30p前後も伸びる「距」を見て、その先端に溜まる蜜に到達できる未知の蛾がいると予言し、予言通りの蛾が彼の死後に発見された話は有名]

今森:見た目そのものから、コメット蘭とか彗星蘭とか、呼ばれていますね。この間、日本で大きな蘭の展覧会がありまして、それにもこれが出ていましたね。だから、やっぱり栽培されているんだなと思って。プロの間では野生のやつが出回っているんですね。

[編集部註:尾のような距をもつ星型の花から、アングレカムの英名はComet Orchidという]

次、お願いします。

これはいきなり蛾ですね(笑)。いきなりこういうふうになっちゃうからあれですけど(笑)。さっきの蘭に来る蛾の口なんですね。恐らく世界で一番長い口を持っている蛾なんですけど、それがぜんまいを巻いたように縮めた状態なんですけども、はみ出ているんですよ。普通、チョウでも蛾でもぜんまいをしまうと、この毛の中にこうやって入ってしまいますよね。ところがこいつは、はみ出しっ放しなんですね。人間で言ったら出っ歯なんですね(笑)。こんなに出てる蛾・・・。(写真4・表紙左下)

結局、これを全部伸ばすと自分の身長の約4倍の長さの口吻(こうふん)になって、さっきのランの所に差し込んで、ずーっと入っていくんですよね。それで、一番底の1センチの所にたまっている蜜に届くまでずーっと差し込んでいくんですけども、そのときにおかしいのが、今度引き離す時に、雄しべの所のキャップみたいなのがぱかっとはずれて上に行って、この付け根の所に花粉が付くんですよね。そういう仕組みができていて面白いですね。養老さん、これはどうですかね。こういう・・・(笑)。

養老:こり過ぎっていう感じですね(笑)。

今森:こり過ぎ(笑)。この辺のところって、なかなか難しい。結局僕、これは「世界昆虫記」の取材というか自分のライフワークで、養老さんには光栄にも世界昆虫記が出た時は小論文まで書いていただきまして。その世界昆虫記の自分の取材、ライフワークをやっていた時なので、けっこう意を決してやっていて、結局なかなか撮れなかったんですね。それで、かなり大きなケージに放し飼いにして撮影は一応成功したんですけど、ビーグル号航海記の時はその話が出ています。

そのあと、この口吻の上の所に花粉を付けているやつをいっぱい見つけて、「すごいなあ」と思いました。そんな、久々じゃないですけど割と興奮した一面ですね(笑)。

次、お願いします。

これはスズメガです。マダガスカルってやっぱりキサントパン、さっきのスズメガが代表するように、スズメガって種類がすごく多いですよね。これは闇の中を飛んでいるところですね。こちらを向いて飛んでくるところが写っています。(写真5・表紙中央)

養老:僕、夜中に懐中電灯つけて歩いて、動物の目玉が光りますでしょう。だけどものすごく明るい真っ赤な点があって、犯人逮捕してみたら蛾だったんですよ。蛾の目が光るんです、やっぱり。よく言うでしょう。草食動物と肉食動物って、目の光が違うんですよね。懐中電灯でも何でもいいからライトで照らすと、目が光るからすぐ分かるんですね。ところがそれをやっていたらうんと近くでものすごくよく光るのがあって、ただし小さいんですね。それは蛾の目玉だったんです。これは光りません?

今森:光ります。このスズメガっていうのは、普通の蛾と比べて割と複眼が大きいですよね。そういうことがあるかもしれませんね。こういうのも夜にやっぱり懐中電灯を当てると・・・。

養老:よく分かりますね。

今森:ええ、すごく光りますね。これも口吻の長さを全部測ってみたんですよ。ちょっと今長さは忘れましたけど、ノートなんかにいろいろ筆記したんですけど面白かったですね。口吻のないやつからさっきのキサントパンスズメガのように長いやつまで、いろいろありましたね。すごくびっくりしました。

次、お願いします。

これは蛾なんですけど、この模様がすごいですよね。こういうやつって、けっこうマダガスカルって多いと思いませんか。

養老:色が変ですね。

今森:色がね。

養老:昆虫でも「マダガスカル色」っていう感じのがあります。色模様が、「この色ならマダガスカルだろう」っていう・・・(笑)。

今森:どう違うんですかね。

養老:それは不思議で、好きなやつが集まったときによく言うんですよ。南米は南米の色で「インカ色」って言っているんですけど。インカ色とマダガスカル色は非常に目立ちますね。「こんな色の取り合わせはないよ」っていうのがあるんですよね、マダガスカルには。

今森:それは文化ですかね。

養老:そう、虫の文化みたいな感じがするんですよね。

今森:虫の文化(笑)。

養老:ええ。非常に変な取り合わせになっていて、変というかマダガスカルらしい色になっていて、よその虫、北半球なんかのを見つけていると、完全に違うっていうのが分かりますね。

今森:なるほどね。日本の場合はどうですか。その・・・。

養老:日本は、僕は昔から見つけているから、逆に言うとそっちが当たり前だと思っているでしょう。

今森:ああ、そうか。日本の色は自分にあるわけですね。

養老:そうなんです。だからそれは日本色になっているわけですね。その目でマダガスカルとか南米を見ると、ものすごく違うんですよね。それからアジアで言うと、ウオーレス線を越えた途端にぱっと色が変わるんですね。

今森:ああ、インドネシアの辺り。

養老:スラウェシ辺りからです。

今森:スラウェシ辺りですね。それはアジア的な所からあっちのオセアニア地区に移ったってことですね。不思議ですよね。

養老:そうなんです。「このグループの虫は、こんな色をしているはずがない」っていう常識がこっちにあったんですね。その境界を越えた瞬間にそれが壊れるのです。

今森:それはやっぱり、地球の成立年代と関係あるんですかね。

養老:よく分かんないですね。それ、いつも知りたいなと思って・・・。不思議なことに、そのインカ模様っていうのは、恐らく南米の人が使う織物やなんかの色合いと同じなんですよね、こっちが見ると。

今森:でも、それは明らかに人間がまねしてるんでしょうね。

養老:人間がまねしてるのか・・・。

今森:まさか人間のことを昆虫がまねしないでしょう。それは・・・。

養老:それはそうなんですけど、あの風土にいると独りでにあの組み合わせになるっていう、何かそういう・・・(笑)。

今森:その辺から大体信憑性がなくなるんですけど。

養老:要するに、共通の理由で同じ色彩になっていくのか・・・。

今森:ああ。でも、何かそういう人間も含めたところの風土色が、自然と人間の文化の中にあるということですね。不思議ですよね。

養老:日本で言うと大澤(省三)さんのオサムシの仕事に出た時に中村さんが言ったけど、要するにマイマイカブリで色分け地図作って本州がきれいに色分けされると、それに一番よく一致するのは、型式による縄文式土器の分布図だって言っていましたね。

今森:ええ?ほんとですか(笑)。

養老:要するに、縄文式土器を型式で分けるでしょう。それで日本を色分けしたのとマイマイカブリで分かれた地図が、重なるって言うんです(笑)。多分虫も人間も同じ・・・。

今森:おかしい、それ。

養老:強いて理屈を付ければ、縄文の人っていうのは自然環境と密接にかかわって暮らしているから、自然環境が違う所では自然に暮らし方が違ってくるわけでしょう。それが自然に土器に反映している。だから、人間の生活圏が完全に生き物の自然圏と一致しているっていう・・・。

今森:生命の種を超えてそういう同じような現象が起こるっていうのは、並行進化とは違うかもしれませんが、ある意味で不思議なところがありますよね。

養老:いや、それはもう非常に面白くて。

今森:面白いですね。

養老:もう1回一生があれば調べたいなと思っている問題ですよね。

今森:これからは無理ですか。

養老:これからじゃちょっと間に合わないかなとか思って・・・(笑)。擬態がそうですよね。擬態といってもいろいろありますから、ものすごく面白い。それと似た話ですよ。南米なら南米、マダガスカルはマダガスカルで独特の色合いができちゃうっていうのは、ある種の仲間同士の結束というか擬態というか、「この手の色にしよう」って・・・(笑)。

今森:人間も?

養老:虫もね(笑)。変なところで割合そろっているわけでしょう、こっちから見るとね。

今森:なるほど。だから、外部の者から見るとそれがよく分かるわけですね。

養老:そうなんですよ。

今森:逆にマダガスカルの人が日本に来たら、みんな思いますかね。日本人の地味さと・・・。

養老:きっと「これ、日本色」とか思っているんじゃないかな。これはしかし・・・。

今森:この配色もないですよね。初めて見る色合いですね。

続けてもう1点、次、お願いします。

この模様もないんですよ(笑)。ないですね、これは。これもびっくりしました。こいつは割と大きな蛾なんですよ。体長で言うと4センチぐらいあるんです。けっこう立派な蛾なんですね。それを僕、つかまえたんです。そしたら何をしたかというと、この蛾、この頭の付け根から黄色い泡を出したんです。ちょっと不気味ですよね。だから、やっぱり警戒色なんでしょうね。

養老:そうですね。普通では黄色と黒ですからね。でも間に淡色を挟んでうんと目立たせていますから。

今森:これ以上目立つ色はないですよね。第一これは擬態にもなってないですね。

養老:なってないですね。全然違うね(笑)。

今森:いや、不思議ですよ、ほんとに。その泡が臭かったんですよ。だから、多分鳥に捕食されたときに出すんだろうなという感じですね。

次をお願いします。

これはヤママユガの仲間なんですけど、こうやって前羽と後ろ羽を重ね合わせて止まっているんですけど、実は後ろ羽にすごく鮮やかな模様を持っている蛾だったんですね。

次、お願いします。

こんなのがあるんですね。養老さん、こういう蛾って、日本にもヤママユガっていますよね。南米のほうへ行くと、こんなやつって割と多いですよね。これ、何がすごいかっていうと、僕はマダガスカルの中でしか見たことなくて、これでしか見たことないんですけども、これはどうするかっていうと、後ろ羽を動かすんですよ。で、どうなるかというと、表情が出るんですよ、怒ったり笑ったり。これ、うそじゃないですよ。ビデオがあったら絶対撮りたいと思っていることなんです。これ、ほんとすごいですよ。ぱっとやって、後ろ羽が見えた途端に後ろ羽をこういうふうに動かすんですね。そうすると、目が離れたり近寄ったりするんですよ。怒ったり笑ったりになる。それがすごいですね。(写真6・表紙右上)

養老:山岸さん、これはフクロウの目じゃないんですか(笑)。

山岸:いや・・・。

養老:全然違う(笑)。

今森:何かに似ていませんか。似ていますよね。動かすっておかしいでしょう。

山岸:原猿の眼でしょうかね。

今森:原猿ね。大きさから言うと。

養老:前の羽にも一応目玉みたいなのがあるところが何とも言えない。

今森:予兆?があるのがすごいですね、「今から見せるぞ」みたいな。それで、この・・・。

養老:あっちが開くと下の目になるわけですか。

今森:そうですね。

養老:目を開いたって感じなんだ(笑)。

今森:ちゃんと舞台を作っているような感じですね。この眼状紋の周りの紋様がすごいですよね、色が。ほんとに怖いっていうか、けっこう恐怖感・・・。

養老:そうですね。くま取りとしては相当なもんですね、これ。

今森:日本の歌舞伎の人たちの顔によく似ていますよね。怒っているときのペインティングの顔にそっくりです。これはちょっと驚きですね。僕はこれほどすごい目玉の模様を持っているやつはマダガスカルでしか見てないし、この種類だけですね。この後ろ羽を特に動かすことができるのは、今のところこれしか知らないです。

養老:しかも瞳が光っていますね。

今森:瞳が光っていますね。すごいですよね。これで音でも出たら完璧ですけど、音はさすがに出さない(笑)。

今森:これは多分、先程おっしゃった擬態に入るんですかね。これはどう理解したらいいんでしょう。

養老:大体何なんだ(笑)。

今森:よく分からない(笑)。これ、蛾なんですよ(笑)。

養老:蛾はいいんだけど・・・(笑)。

今森:ちょっと説明しないといけない。蛾で、これが目玉ですね。これが羽。後ろ羽がこれに重なってここにありますね。これが胸部ですね。で、腹。あれ、前脚が見えているんですね。触角は下のほうにあって、この前羽の下に折り畳んでいます。

養老:入れちゃってる。

今森:ええ。今そういう状態です。それで1本の木に止まっているんですね。これ、本人に聞いてみないと分からないですね(笑)、どこで何を討論していても。これも体長2センチぐらいの大きさで、割と大きいんですよ。比較的形がちゃんと分かる蛾でしたけどね。これも不思議な形をしています。こういうの、何か鉄色のような、ビロードのような感じですごいんです。

次、お願いします・・・。

今森:養老さん、これは見られていないですか。

養老:見ていません、残念ですね。私、行ったのが冬ですから。

今森:なるほど。これは私も見たのは10月ぐらいでした。ちょっと夏になってからです。これは繭がすごい、銀色の繭。財布にしたら売れるんじゃないかと思って。すごくきれいな蛾です。

養老:あれ、絹で包むのはどの蛾ですか、布は。あれはヤママユ蛾でしょ。

今森:どんなやつですか、おしゃっているやつ。

養老:お墓で死んだ人。

今森:絹?絹の、そうですね。

養老:あの蛾はヤママユ蛾だと思います。

今森:そうですか、なるほど。

養老:ヤママユ蛾の種類が多いんでしょうか。

今森:そうですね。大体ヤママユ蛾の種類はこんな感じです。

養老:だけどこれも、ここまで凝ってどうするんですかね。

今森:これ、いや、分からないです。

養老:形といい、模様といい。

今森:飛んでいる時にすごくきれいでした。ちょうどたこを揚げている感じです。尾っぽが、ひらひらとなるのです。これがやけに目立つのです。ですから、これもひょっとしたら鳥とか何か追い掛けられたときに効果があるのかなという気がします。飛んでいるとすごくきれいなのです。逆に、僕は町の中でこれをけっこう見たのです。街灯がありますよね、その街灯の周りを飛んでいるのです。これが飛んでいたら、遠くからでもすぐ分かります。大きな蛾がさーっと飛んでいると、ひらひら舞っている。

養老:鳥にしてみると、どっちが胴体だか分からないような(笑)。

今森:そうですね。どっちが先か分からない。多分、かなりそうでしょうね。

養老:前のほうと後ろのほうの間に大きな胴体があるように錯覚するかもしれないです。

今森:そうか、なるほど、そうかもしれない。

養老:ものすごく大きなものに見える。

今森:そういうことですね。真ん中が黒ですもんね。そうかもしれないです。これもさっきの蛾ほどではないですが、目玉の模様を持っています。マダガスカルは、蛾にとって余程怖い所なのでしょう。天敵も多いのでしょう。

次、お願いします。

これが、その銀の繭を作っているところです。これが幼虫です。この幼虫がでかいんです。体長は10センチ超えます。太さが直径3センチぐらいの太い幼虫です。すごくでかい芋虫。芋虫というより何と言うか、それを越えています。それが銀色?の糸を吐いて、銀の繭をつむいでいるところです。大体数時間かけてきれいな繭を作ります。(写真7表紙左下)

養老:これは、現地の人は食べないのですか。

今森:聞かなかったですが、現地の人は食べていないみたいです。でも、食べてもおいしそうというか、栄養にはなりそうです。昆虫食にはなりそうです。養老さんもあちこち昆虫食は食べたのではないですか。

養老:いいえ、もったいないから食べないといつも言うんです。

今森:タガメは食べたことないですか。

養老:いや、食べたことない。

今森:本当ですか。意外ですね。セミは?

養老:カメムシはにおいが嫌いなのです。

今森:カメムシの仲間?セミはどうですか。

養老:セミですか。セミは別に何でもないです。

今森:そうでしょ。あと、コオロギは?

養老:コオロギも何でもないです。

今森:そうですか。意外に食べたことないですね。

養老:いや、虫は食べるものではないと思っていますから。

今森:あー、そうですか。(笑)

養老:標本にするものだと思っていますから。

今森:僕も決して食べるものだと思ってないですけど、必要に迫られて。一度、オーストラリアでアボリジニと一緒に同行して取材したことがあって、アボリジニの人たちの中に入って、テントなしの野ざらしのキャンプなのです。平原の上に寝て、そういう生活なんですけれども、食べ物がないのです。重要なたんぱく質源としてコウモリガの幼虫を飲むのです。それが、大きさがこれぐらいあるのです。体長が10センチ近くあって太いのです。それを飲むのです。それは気持ち悪かったです。みんなが飲むのでしょうがなくて目をつぶって飲んだら、餅が引っ掛かるみたいにのどに引っ掛かりまして(笑)。これもう死ぬと思ったら、次どうなったと思います?芋虫が自分でのどに入ってくれたのです(笑)。のどの中に動いていくのが分かるのです。そんな経験あります。二度としたくない経験ですけれども。

養老:あれは確か食べ方があって、頭をつまんで、頭を食いちぎって捨てるんでしょ。

今森:よくご存じですね。食べたことあるんじゃないですか(笑)。そうです、そうです。

養老:そうでしょ。

今森:なんで頭を食いちぎるかというと、頭を食いちぎらずにそのまま飲んだら食道をかまれるのです。牙がけっこう大きくてかむのです。その前にあらかじめ牙をつぶすのです。頭をきゅっとかんでかりっという?のですけど、それからすぐ飲むのです。そういう飲み方をする。食べたことあるんでしょ(笑)。

養老:食べるものではないです。

今森:食べるものではない(笑)。

養老:ごく普通に虫を食べる所はラオスです。

今森:ラオスね。

養老:タイの同級生がいて、医学部の二十歳ぐらいの時に、ラオスは貧乏だからという話になって、ラオスでは街灯の下に子供がいて明かりに来る虫を食べているんだよと言うから、それはちょっとおおげさじゃないのと思っていたのです。その後ラオスに行って、村に虫を取っておいてくれと頼んでおくのです。取っておいてくれたって空瓶ではしょうがないから、虫を捕まえてそこへ放り込んでと言って、アルコールを入れたポリ瓶を預けておくのです。ところが、連中もアルコールだと分かると虫を放り込まずに飲んでしまうので(笑)、しょうがないから必ず酒を一緒に持っていくのです(笑)。こっちは飲む分でこっちは虫を入れる分だと、入れてもらうわけ。

入れて回収してきて車で開けたら、大きなバケツいっぱいになったのです。それを持ってホテルというか田舎の宿屋に戻って行ったら、おかみさんが出てきて。日本だったらバケツいっぱい虫が入っていたら女の人がギャーとか言うでしょ?平然としているのです。何か聞いているのですが、言葉が分からないから食べるまねをしたら、そうかそうかと納得して行ってしまったのです(笑)。向こうの店は食べ物屋も壁がないでしょ、屋根があるだけですよね。そういう所で、土間で、虫が飛んでくる。そうするとちょっと取って、こうやって二人で話していると飛んでくるじゃないですか、捕まえて、羽むしって、足むしって、ポケットに入れて、後でお腹がすいたときに食べるの(笑)。

今森:けっこう食べるのですね。

養老:そうです、割合に普通です。

今森:タイのほうでも有名ですよね。

養老:市場へ行くといろいろなものを売っています。

今森:そうですよね。タイ、ラオス、あの辺は食べないものはないのではないですか。

養老:僕は一説あって、中国人は何でも食べるという意見なのです。食べてうまければ中華料理の材料にする。まずかったらどうするかというと、全部漢方薬にするのです(笑)。稼ぎまくっちゃうんだから。北京原人の骨がどこかへ行ってしまったでしょ。あれも削って飲んでしまったのではないかと言う疑いを多少思っているのです(笑)。

今森:そうか、大体すべてのものが口に入るわけですね。なるほど、おかしいですね。

次をお願いします。

これもけっこう悩んだ蛾です。これは見てお分かりの通り、屋根型に蛾が羽を畳んでいるのです。前羽と前羽をぺたっと閉めてしまって、後羽はその前羽の下に隠れて見えないのですが、前羽がつながっている状態なのです。ところが、その三角形の前羽がつながっている状態が一枚の枯れ葉のように、枯れ葉というか破片です。かなり虫に食われた状態の破片にそっくりなのです。そういうものに見えるのです。これは擬態かどうかをいつも悩むのです。こういうものを擬態と片付けていいのかどうか。

養老:これも形、凝り過ぎですね。

今森:これは少し凝り過ぎですね。なぜそうならなくてはいけないのでしょう。それがよく分からないです。このえぐれている所がすごいです。これは標本にしたらどのように見えるのでしょう。

養老:けっこう角度開いてしまうから、当たり前に見えてしまう。

今森:そう、当たり前に見えるのですかね。これは面白いです。

それと、この写真を見て思い出しましたが、面白い。印象に残っているのが、これ。てかっているのが分かりますか。ニスを塗ったように、ここほら、ここからこうかけて、白い点、これ模様ではないのです。これてかりです。ニスを塗ったようなてかりがあるのです。それが非常に不思議です。なぜそのようなものがあるのか。質感がそういう質感なのです。

養老:こういうの、ひょっとして紫外線撮ったりすると、模様が見えませんか。

今森:紫外線のフィルターを掛けて撮ると面白いかもしれません。違う模様が見えて。何か暗号が浮かび上がってきそうです。怖いです。

養老:よく言うのですが、「バカ」って書いてあったりして(笑)。

今森:いや、分かりませんよ。意外にこんなのも分かりません。紫外線入れると。しかし、何かのっているのです。この蛾も何でもないのですが、撮りたいなと欲求させる蛾なのです。不思議です。大きさは2センチぐらいの大きさです。全然大きくなくて、でも小さくもない蛾です。

次、お願いします。

これ、見てください。これもマダガスカル色なのです。これはよく日本にいるスカシバガのたぐいです。日本の蜂に擬態していまが、あれですかね。

養老:これは通り越しています。

今森:通り越していますよね。もしこれが蜂に擬態していたとしたら、これにそっくりな蜂がいるということですから、そうなのでしょうか。

養老:そういうのはいませんでしょう。もし擬態なら、モザイクになっています。骨がちょっと変ですし、それこそ甲虫に似ています。いくつか赤地に黒の縦じまが入ったものありますから。

今森:そうですね。

養老:胴体がいかにも変です。黄色い帯と赤い帯と混ぜて白と。

今森:ちょっと変です。

養老:地色が黒だから少し変です。

今森:間隔が。それと羽も面白いです。これも蜂ではないですね。チョウとかそういうのに、こんなやつがいるのではないかという気がする。

養老:これ確か擬態の例ではなかったですか。擬態の例にあったような気がします。

今森:ありました?

養老:はい。

今森:それチョウですか。

養老:どっちがどっちに真似しているのか忘れましたけど。

今森:でも、チョウではないかもしれないです。これ不思議なのです。羽のやつはチョウに見えるのです。文様の付き方がチョウにこんなやつがいるんだろうなと。体が蜂っぽいなという気がします。これ、あまり珍しくなかったのです。けっこう見たのです。ですから多分モデルになっているやつがいるんだろうなと思います。私の滞在中には、結局これは見なかったです。

次、お願いします。

カメムシです。けっこう大きいです。大きいと言っても2センチ5ミリぐらいの大きさで、割と大きなカメムシです。全身真っ赤です。上も真っ赤。側面も赤いのですが、お腹の所だけ黒と黄色のしま模様があるのです。すごく毒々しいというか、これも不思議です。複眼まで赤いです。触角が黒くて、脚(きゃく)の関節の中程からまた黒くなるという。不思議なカメムシです。

次、お願いします。

これは、ナナフシです。オオトビナナフシと言うやつで、体長は27センチ、30センチ弱でむちゃくちゃ大きいです。これがどういう状態かというと、私が手に持ったら怒ったのです。そうしたら後羽を開きまして。上に小さいのが二つ一対になってあります。これが前羽です。今、後羽を開いている状態です。やはり飛べないみたいで、いつまでもこういう感じです。威嚇でしょうか。(写真8表紙右下)

養老:そうでしょう。僕もこの仲間見ました。

今森:そうですか。ものに驚くと威嚇するのです。この胸の所に緑の点々が見えますが、それがとげだらけなのです。マダガスカルはとげの植物がとても多いですけれども、まさにそういう感じがしました。これもすごかったです。次、お願いします。

養老さん、これは遭いましたか。出遭われましたか。

養老:え?何もないじゃないですか。何があるのですか。

今森:これヤモリです。ひょっとして、さすがの養老さんも分からない。これが目です。これ、顔。胴体、しっぽ、前足、後足です。ぺちゃんとへばり付いています。大きさはけっこう大きくて、30センチ越えています。でかい、かなり大きなヤモリ。これは湿潤な森の中で何度か遭って、私と一緒にコーディネートしてくれていた専門家が見つけてくれて、こういう状態でいたのです。写真を撮ろうと思ったら、早いのです。じっとしているのですが、たたたたっと登っていって、ぴたっと止まるのです。上に行ってしまったのです。こういう木なので、枝ばかりだから登ろうと思ったのです。登ってこうやって枝を抱えた、そうしたらそこで動き始めたのです。私が手にさわった(笑)。あの時死にそうでした。後ろにいたディレクターがもっと真っ青になっていたかな。私がこうやってこう持った時に、そのヤモリがのけぞって口を開いたんですって。その口の中が真っ赤なのです。それで失神しそうだったと言っていました。それを見ずに済んだのですけれども。気持ち悪いやつで。私、情けないことに日本のヤモリも持てないのです。

養老:これに食われた虫は木に食われたと思っているでしょう(笑)。

今森:本当にそうです。おかしいです。お尻のほうがぺたんとなっているのがおかしいです。どこからどこが、境というものがないのです。不思議です。これはカモフラージュでしょう。

養老:そうです。カモフラージュも多いですよ。

今森:そうですね。

養老:この手の木があります。それで、蛾が付いているのです。

今森:なるほど。それを食べているのでしょう。

養老:さわらないと分からないような(笑)。

今森:次、お願いします。

これは、まだ同定していないトマト色のカエルです。大きさは日本のアマガエルより少し小さいくらい。かわいいカエル。これも湿潤した森の中にいました。鳴き声は聞いていないです。たくさん見ました。それほど珍しいカエルではないと思います。この色も不思議です。しかも目は真っ黒で。

次、お願いします。

これもカエルとしか言えないです(笑)。すごく大きな目なのです。顔の大きさに比例して眼がものすごくでかいのです。ばちーっと開いて、木に登るらしく、いつも木の小枝の所にいるのです。すごいです。

次、お願いします。

これは、カメレオンがバッタを捕るところです。今、舌を伸ばしたところです。これは、一瞬ですから撮るのに苦労しました。実はこれはセット撮影です。カメレオンのこういう写真はいっぱいありますが、野外でなかなか撮れないです。ですから、大体大きなセットで撮るのです。このカメレオンはもちろん本当に生きているものなのですが、セット撮影するのです。これを撮影するのに郵便局の2階を借りたのです。そこで数週間住んでいて、暮らして、自分の部屋の中にカメレオンを20匹飼っていたのです。放し飼いにしていたのです。カメレオンと一緒に寝ていたのです。その時に気が付いたのですが、カメレオンは夜も目を開いているのです。絶えず見られているような感じがして気持ち悪いです。僕が寝ていると20匹のうちだれかが私のほうを見ているのです。それが分かるのです。気持ち悪い生き物ですね。こうやって餌をやると、ぱかっと食べるようにして、かなり手なずけた状態で撮影する。そこまですると撮影が簡単にいくのです。(写真9表紙上)

養老:これ、目がよく分かりませんけどね。

今森:コントラストが高くなっていてデュープのせいかもしれません。目はどこを向いているかというと、前を向いているのです。捕獲するときだけこうあちらこちら動く目が、真っすぐ前を向くのです。それで、しばらく見つめるのです。そのあと、舌を出すのです。にゅーっと。またそれで止まるのです。これでよくもう一回見てから、ぱかーんと出るのです。プロセスがゆっくりしているのです。ですから、動きが早いものは捕れないのです。じっとしているものしか。

面白いことを実験しまして、その焦点がこうやって合ってきます。舌をひゅーっと出した時に、バッタとかカエルの間に手をぱっと入れたのです。そうしたら、カメレオンはどうしたと思いますか。間違っていったか、それともやめたか。馬鹿な質問ですみません。

養老:やめました。

今森:やめてないのです。どうしたかというと、手でぱっと遮ると、そのカメレオンは上を向いて、そこからぱーんと来たのです。

養老:上から。

今森:上から来た。ただ、それだけなのです。考察も何もないのです。

養老:雑誌で論文を読んだ覚えがあるのですが、カメレオンがどうやって距離を測るかという問題です。今の話で普通に考えられるのは、目玉が二つありますから三角測量です。

今森:三角測量ではないでしょうか。

養老:そうだという考えと、そうでないというのがあったと思うのです。それを今思い出そうと思って、古い話で思い出せないのだけれども。どうやってこの距離を測るのか。

今森:それと面白いのが、何度も餌をやっているのと分かるのが、今養老さんがおっしゃったように、自分の射程距離に入るまでそれをやらないということです。要するに、舌の準備をした時は完全に射程距離に入っていて、意外にあまり遠くないです。近いです。自分が歩いて行くか、相手が来るのを待っているだけで、あまり遠い所にいるときにやらない。ですから本当に至近距離に来たときに準備に入るというか、そういう。これもあまり距離は長くないです。そんな自分の体の距離ほど伸びていないです。それほど遠くはないのです。

養老:でも人間のことを考えれば長いです(笑)。

今森:人間でこんなだったら気持ち悪いです。でも、便利でしょう。コマーシャルでひゅるひゅると伸びていくやつがありますけれども。この撮影は面白かったです。

養老:解剖をやっていて思ったのだけれども、筋肉は縮むことしかできないのです。そうでしょ、筋肉は縮むのが仕事なのです。舌は筋肉の塊なのです。縮む筋肉でできている舌がどうして伸びるか(笑)。それを学生に聞くと、けっこう答えられない。

今森:カメレオンがですか。

養老:カメレオンでもいいのですけれども。われわれの舌でも同じです。伸ばせるでしょ。舌を出せるけれども、舌を出せるときは舌が伸びています。だけど、舌は筋肉の塊なのです。筋肉は縮むことしかできないのです。縮むことしかできないものを集めてどうやって伸ばすかという話です。

今森:どうしてですか。

養老:けっこう厄介な話なのです。

今森:厄介な話。

養老:そうでしょ。縮むだけのものを集めて、どうやって伸びるものを作るかという話ですから。これもそうですよね。これだけ伸ばすのに、どうやって伸ばしているのかということです。普通は骨がないのです。こういうのは多少芯を入れているかもしれませんけれども、舌の中にはあまり骨はないのです。

今森:伸ばしたあとはどうかと言いますと、例えばロープを放ります、そのあと手繰り寄せます、その感じがするのです。つまり、伸びるときはぱかーんとはずれるように伸びるけれども、あとは労力で回収しているのがよく分かる。つまり、回収するときはこのような感じです。ふやーふやーふやふやというか。けっこう苦労しているけれども、伸びるときは楽なのです。何かがはずれているように見えます。

養老:分かります。

今森:あとは力でこうまた。

養老:要するに、力をためておいて引っ掛けてあって、その引っ掛けをはずすとぴょーんと行くという感じでしょ。行ってしまったら、あとはだらんとしてしまってしょうがないから。

今森:力で。

養老:回収するのだけれども。

今森:その時筋肉が働く。

養老:いえいえ、最初に伸びる時に筋肉が働いたらおかしいです。

今森:そうですね、いや、その回収するときに。そうか、そういうことですね。

養老:舌が伸びるのを説明してごらんと言われると、往生するのです。

今森:それは往生しますよ。

養老:ともかく、縮むことしかできないのですから。どうしてこんなに伸びるんだよという(笑)。

今森:本当に不思議です。次、行きましょうか。

これは、旅人の木です。これもマダガスカル独特の風景です。

次、お願いします。

これはレイチの収穫です。私が行った時には、農作物を作る辺りはレイチの収穫がちょうど真っ最中で。これ安いけれど、おいしかったです。すごくうまかった。

次、お願いします。

これ、子供です。養老さん、あれ食べられましたか。野菜いためというか、野菜とル・マザーヴァというやつ。あれはなかなかおいしい現地食です。その材料を子供が採って帰るところです。

[編集部註:ル・マザーヴァは、煮込みであって、炒め物ではありません]

養老:やはりお米だから、食事が合っていますね。

今森:合っていますね。大変おいしかったです。

次、お願いします。

これ、玉虫です。いかにもマダガスカル的な玉虫です。こんなやつ、世界中探してもいないです。形といい、模様といい、変です。

養老:変な玉虫いるんですよ。

今森:変ですよね。これはまだましなほうですか。

養老:ましです。テントウムシか玉虫か分からないとか。

今森:次、お願いします。

これは、ウツボカズラです。

養老:これも多かったな。

今森:これ、見られました?

養老:はい。

今森:これも、アジアからのあれにすると一番西の分布らしいです。

次、お願いします。

これ、バオバブです。この辺も行かれましたか。

養老:これは飛行機から見えるのです。・・・。着陸しようとする少し前辺りから下を見ていると、バオバブがいっぱい見えるのです。

今森:またそれもいいでしょ。

養老:ものすごく目立つ木です。

今森:そうですね。これなかなかシルエットがきれいな木で。大体マダガスカルへ行かれた方はみんなそう思われるかもしれないですが、行ってない方にこんな写真を見せると、いいなあと言うのです。そうではなくて、こういう状況で撮影をする時は、マラリア蚊がいっぱいいるのです。蚊にぶつぶつ刺されながらやっているのです。その時の状況は忘れてしまって、こうやって改めて見ると気持ちいいなと思うのですが、当初は決して気持ちのいいものではなくて、大変なのです。(写真10裏表紙)

次、お願いします。

これも、バオバブです。けっこう大きな木です。

次、お願いします。

これは、タコノキです。オクトパスツリーです。これもマダガスカル独特の、とげと。

[編集部註:タコが脚を広げたような枝振りなので英名Octopus tree。「タコノキ」と訳されることがあるが、和名の「タコノキ」が指すのは別の植物]

養老:痛そうです。

今森:痛そうです。でも、こんな所に平気で原猿がいるのです。猿が綱を渡っているように飛んで歩いているから本当に不思議です。

次、お願いします。

これは、ヘクソドンです。これは本当に後羽ないです。確認したのですが、後羽が退化していてすごいなと思いました。こういう後羽がないやつはけっこう多いですね。

養老:多いと思います。知らない方のために解説したほうがいいのではないですか。

今森:そうですね。こいつは、前羽はちゃんと分かれているのです。こじ開けると開くのです。それなのに、後羽が退化しているというか。

養老:これは知らない方のために、カブトムシの仲間です。

今森:そうです。

養老:どこがカブトムシだと(笑)。

今森:これ、どこがカブトムシなのですか。お聞きしたいんですけれども。生殖器とか交尾器とか、そういうレベルですか。

養老:足辺りを見ると、なるほどカブトかなという気がします。

今森:そうですね。脚(きゃく)を見ていると、本当にそうです。カブトムシの。

養老:マダガスカルでごく特殊に分化したカブトムシです。

今森:そうです。

次、お願いします。

これは、ゴミムシです。ヒョウタンゴミムシの仲間で、これまたすごいのです。でかいのです。体長4センチぐらいあるのです。すごく格好いい。クワガタムシ顔負けだという。腰のくびれといい、上半身の膨らみといい、本当に最高です。(写真11裏表紙)

養老:これも飛べなさそうですね。

今森:これも飛べと言っても、飛べないような気がします。

養老:飛べる虫、飛べない虫は、肩で大体分かるのです。肩が丸いです。

今森:あー、肩の・・・。

養老:あの丸みが、上のは特に。

今森:丸みが。上半身がでかすぎます。これも相当凶暴そうなやつです。これは夜行性でした。夜にしか出なかったです。どっかから現れて、夜の砂漠というか、砂地で見ました。

次、お願いします。

これは、オオベニハゴロモというハゴロモの仲間です。日本で言うと、セミの仲間です。同じ種類なのですが、色が緑から赤にトーンになっていて。一説の本では、グリーンから赤まで並ぶと書いてあります(笑)。本当かうそか知らないです。これは並んでいなかったです。これは自然で見た状態そのままで撮ったのですが、このような状態でいたのです。

養老:花に見えました?

今森:これですか。花に見えるというよりは、周りがあまりにも枯れた色の一色の所に、こういうものが何であるのか全く分からなかったです。さわると四方八方に飛ぶのです。多分、猿とかそういうものに食べられないようにするには効果があるのでないでしょうか。花には見えなかったです。

養老:擬態の本には花に見えると書いてありますけれども。花に見えるとか言うのは、きっと人間だけです。

今森:最初に研究された学者さんが花に見えたとか、そういう論文を書かれると、そうなってくるという。

養老:何か写っていません?

今森:花が?

養老:いえいえ、虫に何か写っているように見えるのですけれども。

今森:透けていますか。

養老:透けているのですか。

今森:太陽の光で透けているのです。そういう意味では花びらと同じような、植物的・・・。

養老:かなり薄いのですね。

今森:かなり薄いです。質感としては花びらにそっくりです。擬態の本には、豆科の植物に擬態していると書いてあります。確かに豆の花に似ているなと思います。でも、それが果たしてそうなのかよく分からないです。下の白いやつが幼虫です。

養老:いるなと思って。

今森:これが脱皮したら、上のこんなふうになるのです。

養老:幼虫は何に見えているのですかね。

今森:本当ですね。

養老:つぼみか何か(笑)。

今森:幼虫は何に見えるのでしょう。

次、お願いします。

これは、ホウシャガメです。これもあまり多くはなかったです。たびたび、旅先で見つけました。大概見つける時は、車で道路を走っている時のそのそ歩いていて、それを撮ったものです。周りは全部とげのある植物ばかりです。これ、きれいな亀ですね。こうやっていると持って帰りたくなります。本当はダメなのですけれども。

養老:これはワシントン条約でしたか。

今森:そうですね。 次、お願いします。これは、原猿です。ワオキツネザルです。これが一番多いです。

養老:そうです。これはよく見ました。

今森:これは見られましたか。

養老:はい、これはよく見ました。

今森:これはすごくかわいいというか、体もあれだし、しぐさも面白い、きれいな原猿です。

次、お願いします。

これは、エレファントバードの卵を持っている子供を撮ったのです。もちろんエレファントバードのこんなにきれいな卵はないわけで、これは博物館から借りまして、持ってもらって撮影しています。今はもう滅んでしまったエレファントバードです。世界で一番大きな卵だと言われています。やはりでかいです。直径 30センチまではないですけれども、それに近いです。一番でかいの。これは半化石化した状態で軽いのですが、生きている時は重かったでしょう。オムレツが 180個作れるそうです(笑)。最初にマダガスカルに来た人たちが、この卵を集中攻撃して食べたことがよく分かります。滅んだ原因になっているそうです。(写真12裏表紙)

次、お願いします。

これは、南のほうのサカラヴァ族(Sakalava)の人たちの古い墓地です。四隅を囲って真ん中に埋葬するのですが、こんなふうに木彫りの伝統、これは東南アジアそっくりです。ボルネオとかインドネシアに行くとこんなのがいっぱいありますけれども、本当によく似ています。顔の彫り方とかサギの彫り方なんかは、アジアというか東南アジアの埋葬の仕方と、埋葬だけではなくて、インドネシアに行くと部屋のコーナーのデコレーションにもこういうものを使うのですが、彫り方がそっくりです。目の付き方、口の掘り方なんかは非常によく似ています。これも今は作っていなくて、どんどんなくなる一方だそうです。

次、お願いします。

恐らくこれが最後のカットだと思うのですが、これもマダガスカルの南のほうにある場所です。向こうがかすんで見えるのは、砂ぼこりです。この時風がきつくて、下の赤い砂が空中にいっぱい舞っているのです。夕焼けでもないに、赤く見えているのです。この時雨が降ってきて、向こうから雨がどんどん迫ってきている状態です。畑としてはサイザルですかね。とげの植物です。サイザル麻を作るためのサイザルですけれども、その畑です。かなり広い範囲をこうやって畑にしているわけです。牛を連れて、女の人が頭にまきを持って帰るところです。これも南のほうの独特な風景です。

これで写真は終わりに。おつかれさまでした。

養老さん、行かれた時のこと思い出されました?

養老:だんだん思い出してきました。

山岸:どうも長い間ありがとうございました。特に養老先生、昨日まで今朝までですか、ロンドンに。

養老:昨日帰って参りました。

山岸:昨日帰ってきて、まだ時差も治っておられなくて、「話の最中に寝ちゃうよ」なんて言っていたのですが、寝ないでいただいて結構でございました。

養老:これ見て目が覚めました。

山岸:特にこの会場には専門家もおられるわけですが、養老先生のおっしゃられた焼畑レクリエーション説とか、お墓がどこから来たかなどそれを研究している人がいらっしゃるので、フロアのほうからどなたかどうですか。この焼畑レクリエーション説というのは、いかがなものでしょう。民族やっておられる方でどなたかいらっしゃいません?焼畑やっておられる方いらっしゃらなかったですか、飯田(卓)さん。あなたでもいいです。

飯田(卓):私、調査地が西海岸のトゥリア−ラ(Toliara)ですから、陸路でアンタナリヴから下りる時によく焼畑を見るのです。焼畑というか、あそこは牧草地になっています。もちろん水田地帯は全然火入れはしないのですけれども、水田地帯を抜けると牧草地帯があって、そこでやはり野火がけっこうあるのです。ただそれがなぜあるのかというのをドライバーの人に聞いたら、「あいつら馬鹿だから火をつけるんだ」みたいな話になっているのですけれども、それ以外に聞く人がいないのでちゃんと確かめたことがないのです。すみません、お答えになっていません。深澤先生、知っています?

山岸:深澤先生、それではお隣りさんをご紹介いただけますか。

深澤:私の隣に座っていらっしゃる方が、私が勤めていますアジア・アフリカ言語文化研究所にマダガスカルから客員教授として去年の9月からいらしている、ラザフィアリヴニ・ミッシェル先生(RAZAFIARIVONY Michel)です。ラザフィアリヴニ・ミッシェル先生のご専門は文化人類学ですが、調査地は、アンタナナリヴからタマタブのほうへ行く道の途中にムラマンガ(Moramanga)と言う町があり、そのムラマンガから大体70キロメートルぐらい南に行った所にあるアヌシベアナーラ(Anosibeanala)という地区です。その地域は、熱帯降雨林帯と中央高地の間に位置する熱帯降雨林帯にあって、そこに住む人びとは焼畑農耕をやっています。今ミッシェル先生のほうになぜ焼畑をやるのか、あるいは野火を掛けるのかという話を聞いてみます。

ミッシェル:まずここにお集まりの皆さんにごあいさつを申し上げたいと思います。そして、皆さんがこのようなかたち形でマダガスカルのことを研究するために集まられていることを大変うれしく思います。

マダガスカルというとまだ日本ではあまり知られていません。知っている人でも写真で出てきたようなバオバブというイメージだけのことが多いですね。けれども、ここにお集まりになられた皆さんは、それぞれの専門についてマダガスカルでいろいろなことを研究されております。それを私は大変うれしく思います。

ここで、問題を恐らく二つに分けたほうがいいだろうと考えます。一つは東海岸地域で行われている、マダガスカル語で「ターヴィ」(tavy)と言われる焼き畑。もう一つは、他の地域で行われている「マンドゥル・タネーティ」(mandoro tanety)、野火と言われるもの。焼畑と野火は、分けたほうがいいだろうということです。

中央高地で9月から10月によく行われている野火の一番大きな理由は、牛に食べさせる草を得るために火を放つということです。

大体10月から11月になると雨が降ります。雨が降れば牧草が生えるわけですけれども、雨期に入る直前の9月、10月ごろには、もうあまり草がありません。そういう状況のときに、野火を掛けます。

恐らく中央高地では、野火を掛けるという行為が、かつてあった森林を消滅させた理由だと思われます。

それに対して東海岸においてはまだ多少森林が残っていて、そこでは野火ではなく焼畑が行われているということになります。

東海岸で行われている焼畑において火を掛けるというのは、そこに生えている木とか草を除去して陸稲を植える、そのために行います。

東海岸の地域においては、水田にできるような低地があまりありません。その結果、山に火を掛け焼畑を行うことによって初めて主食である米を得ることができます。

焼畑において耕作される作物は主に陸稲ですけれども、それと一緒に葉野菜とか、あるいは白インゲンなども一緒に混植するということが行われます。

山岸:どうもありがとうございます。時間が来てしまったので、それぐらいのところでよろしゅうございますでしょうか。どちらにしても、両方ともレクリエーションではないということで、ご納得いただきたいと思います。
他にお二人のお話にぜひコメントなり質問などございましたら、一件だけ伺いますので、いかがでございましょう。
もしなければ、懇親会もございますので、そこでごゆっくりご歓談いただければと思います。大変楽しいお話をお聞かせいただきまして、お二人にぜひ拍手でお礼のお言葉をお願い致します。どうもありがとうございました。

(終了)

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