Japan Society for Madagascar Studies / Fikambanana Japoney ho an'ny Fikarohana momba an'i Madagasikara
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アンジアマンギーラナ(Anjiamangirana)監視林における植林活動

島 泰三 (日本アイアイ・ファンド代表) ※ 文責:川又由行


アイアイファンド島泰三代表の「アンジアマンギーラナ監視林における植林活動」の講演をモデレーターが要約した。植物相と動物相はアイアイファンドのホームページのリストを記載した。さらに詳しい植生調査記録は2010年にモデレーターが調査した記録を加えた。


アンジアマンギーラナ監視森林は、Mahajanga (マジュンガ)県、Antsohihy(アンツヒヒ)地域、アナララヴァ(Analalava)地区、アンジアマンギーラナ町に位置する。同監視森林の面積は、143.8km²であり、北端は南緯14度54分58秒、東経47度43分24秒の南北31km、東西10kmに位置する。保護区の中央にアンツキツキ Antsokitoky(標高375m)という頂上が草地の六つの丘が並び、南端にマナサムデイ (Manasamody: 現地の言葉で「家へお帰りなさい」;標高418m) 山が、北部には真っ白い砂の丘にマルヒハナ (Marohihana)林がある。同地域の地層は、火成岩とマジェンガの砂礫質の堆積層が複雑に構成されている。同監視林の周辺に流れるアンカケカ (Ankakeka) 川、アンドニラナイ (Andriniranay) 川、マファリニアイナ (Mafariniaina) 川の水源でもあるが、地域の農業水源でもある。

島泰三代表はマダガスカル島に足を踏み入れてから30年。その間、JICAの専門家として1992年から1995年、1998年から2001年にかけてマダガスカルに赴任した。想い出に残ることは1984年に、世界初の野外でのアイアイの撮影に成功したことである。それまでアイアイは昆虫類を捕食しているのではないかと考えられていたが、ラミー(ramy,Canarium spp.)という木の実は、クルミと同じくらい硬質の種子外皮で覆われ、この外皮に自ら鋭角に伸びた中指で穴を空けて種肉を食べていた。そして、1988年を皮切りにマダガスカル全土を10年かけて周り、ラミーの植生する地域でアイアイによるラミーの種子の食べ残しの観察を続けた。これまで昆虫食などの説もあったが、こうした地道な調査の結果、アイアイの主食がラミーの種子であることが分かった。しかし、残念なことはジャイアントアイアイが生息していたと言われた南西地域を調査したのだが、発見には至らなかった。

1988年、深澤さんからマダガスカル北西部にアイアイが生息しているとの情報を聞きつけ、アイアイをアンジアマンギーラナで捕獲してチンバサザ動植物園で飼育を始めた。ラミー[1]は大きく分けて、熱帯多雨林産のボアビニCanarium boiviniと季節林産のマダガスカリエンセCanarium madagascarienseに分けられる。マダガスカルの中・西部に生育するラミーの種子は小さいため、ジャイアントアイアイの主食と考えると、体の大きさから必要なカロリーを計算すると、ラミーの種子だけでは足りなくなるので、きっと他の副食も採食していたのかもしれない。この西部地域にはベマラハ(Tsingy de Bemaraha)世界自然遺産の石灰岩地域と北西地域のアンジアマンギーラナの二地域にアイアイの生息地がある。東部多雨林産のボアビニをアンジアマンギーラナに植えたところ、1-2年を経過して発芽したが、大きく成長することはなかった。これは東部のボアビニは多雨林産であるため、苗木の被陰を必要としたようだ。一方、マダガスカリエンセは西部地域に分布するため、被陰の必要性がないと考えられる。2002年にアンジアマンギーラナは森林区分で一階級昇格して監視林になった。その頃には同林で環境教育を推進して保護の大切さを訴え、2010年から本格的に植林を実施するようになった。これからは水源地にラミーなどの固有種を植え、裸地にアカシア類の森林群落を整えたいと考えている。また、地域住宅の屋根材に用いられているヤシBismarchia nobilisは固有種でもあることから、積極的に植林を実施している。2011年以来、アイアイファンドは、アンジアマンギーラナ監視林の周辺をも含め、ラミーとアカシアをそれぞれ2,170苗と2,990苗を植えている。

【資料】

同監視林の植生は、パリサンドラの一種ダルベギアDalbergia, アオイ科ヒルデカルテアHildegardia, カンラン科コンミフォラCommiphora(Humbert, 1955)の乾燥・落葉閉鎖林の群落が分布している。同監視林は西部低地林群落植生に属しているが、半湿性、サバナ、岩性植生も広がっている。つまり、同監視林には半湿潤林、乾燥落葉林、ヤシ林、岩性植生、草本植生に分けられる。半湿潤林は河川域の堆積土壌に分布していた。乾燥密鎖林は丘陵地帯の砂質土壌に分布していた。その一部の丘陵地帯の頂上に岩性植生と小河川にバオバブの群落も生育していた。半湿潤林では、アイアイの主食のラミー, Canarium madagascarienseとシンジギウムSyzygium sakalavarumが高木層に成長することが分かった。しかし、ラミーの実生も含め成木の生育が確認できなかった。乾燥落葉林は砂礫質が分布しており、半湿潤林樹種の生育は困難であると考えられる。アカネ科サイコトリアPsychotria spp, アオイ科グレウイアGrewia glandulosa, マメ科アルビジアAlbizia gummifera, ムクロジ科テイナTina striata 有毒植物のマチン科マチンStrychnos madagascariensis, ノウゼンカツラ科フェルナンドアFernandoa madagascariensisなどが天然更新を図っていた。一般的にマダガスカルの西部地域では土壌的条件で生育樹種が異なることが、今回の調査でも確認された。地域住民は牛、豚、鳥、などの家畜を飼育し、キャッサバManihot esculenta、トウモロコシZea mays、サトウキビSaccharum officinarum、タロイモColocasia esculentaなどを栽培している。

植生環境(図1)

図1

鳥類
マダガスカルトキLophotibis cristata、マダガスカルハイタカAccipiter madagascariensis、コマダガスカルオオタカAccipiter henstii、マダガスカルカイツブリTachybaptus pelzelnii、マダガスカルカンムリアマサギArdeola idae、マダガスカルサギArdea humbloti、クロンボガモAnas melleri:以上、絶滅危惧種。 ニシジカッコウCoua coquereli:保護緊急種

哺乳類
ジャコウネコ類:コバマングースEupleres goudoti:希少種、Fosa, Cryptocta ferox:最大種など3種。コウモリ類:大型コウモリ類1種、サラモチコウモリMyzopoda aurita(希少種マダガスカル特産の1科1属1種)など小型コウモリ類4種

霊長類
アイアイDaubentonia madagascariensis、グレイネズミキツネザルMicrocebus murinus 、コクレルコビトキツネザルMirza coquereli、フトオコビトキツネザルキツネザルCheirogaleus medius、ミルヌエドワルイタチキツネザルLepilemur edwardsi 、 ブラウンキツネザルEulemur fulvus fulvus、コクレルヴェローシファカPropithecus verreauxi coquereli

  • [1]^ ラミー(ramy)は約30種が分布している(Brink 2008)。
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